黒色春日和

ダーティな思いつきをキューティにお届け☆

2022-01-01から1年間の記事一覧

禅定のための習作

4月になったらちょっと長いものを書いてみようと思う。 そのための練習として今こうして書き始めてみた。 4月、というのには特に何も理由はない。区切りがいいから設定したまでで全然今からその本番の長いものを書き始めてもいいのだが、ちょっとそれを書く…

Nocturne

ある日、夜道を歩いていると向こうから女性がやってきて声をかけてきた。 「出刃包丁を売ってる店を知りませんか?」 私は知りませんと答えた。 ふと女性の方を見ると女性は髪からその着ている白いドレスまでが何やら緑色のドロドロしたものにまみれている。…

Dear A

三人目がきた。 二人目まではよかったけど三人になるときつい。 僕は滅入ってしまって、ここから出ていこうかと思ったけれど二人目が「待って、まだここにいて」と引きとめた。 「三人目は無理だよ」 「なんでよ、最初にそういう契約したじゃない」 「契約は…

大きな人間

僕はまだ小さな人間で、大きな人間になるのにはまだまだ時間がかかるのだろうけど、そんなことを言い出したらあそこにいるあいつや僕のすぐそばで株取引について弁舌をふるっているこいつだって、大きな人間になるにはまだまだ時間がかかるに違いないのだ。 …

さっきの奴隷

そうじゃない、そうじゃない。 もっと指をまげて勢いよくやらないと。 さっきの奴隷の方がうまかったよ? ああ、そこはゆっくりやらないと。 肩の力を抜いて、集中して。 さっきの奴隷みたいに大けがしちゃうから。 気をつけてやってください。 まだ足りてな…

祝福

モクレン咲き乱れる頃、私はあなたを待っていた。 ずっと待っていたのだけれどあなたが一向に来ないので待ちくたびれてしまって私はJR横浜線鴨居駅までお迎えにあがったのです。あなたは驚いて私になにをしにきたのか聞いたけれど、それはあなたもよくわかっ…

破談

窓の外では雪が降っていた。 野田は風船を膨らましおわると私に手渡し、外に出て行った。 「手袋持ってる?」 私が聞くと野田は首を横に振った。 私はひとつ溜息をついてポケットから赤い毛糸の手袋を取り出し野田に手渡した。 「使えよ」 「嫌だ」 「使えっ…

あたらしい左手

向こう側から戦車がやってきた。 その戦車は子供のころよく遊んでいた公園で見かけた戦車に似ていたので とても懐かしい気分になって すれ違いざま、そのフェンダーに触ろうとしたら 機関室からカラス頭の男が降りてきて 僕のそのフェンダーに触ろうとした左…

絶対に無理してるって思われたくない

絶対に無理してるって思われたくない。 だから僕はいつも余裕ぶって物事をこなしてきたし、 無理しなきゃできないことは避けてきたつもりだ。 でもだんだん気づいてきた。 この「絶対に無理してるって思われたくない」っていう感覚が、 逆に自分に無理を強い…

驚愕

あんまり突発的な物事に驚かないように訓練してきたつもりだ。 坐禅を組む、天に祈りをひたすら捧げるなどして。 でも唐突な出来事にはやっぱり驚愕してしまう。 脇道から犬が出てくるとか。 その犬というのもポメラニアンとかチワワではなく、ゴールデンレ…

ちょっと待て!!セスナがこっちに向かってる!!

わかってるだろ?お前も一緒にプリンを食べた。 それが真実だ。それ以上でもそれ以下でもない。 一緒にプリンを食べたんだからお前にはあいつに電話をする義務がある。 さあ今すぐ電話するんだ。俺のスマホを貸してやるから。 いや、ちょっと待て、なんだあ…

バザー

バザーまでは1週間あった。 私はバザーが楽しみで、早く1週間が新幹線みたいな速さで過ぎ去ってくれないかと天に祈った。 翌日、教室で私が堂々と「バザーが楽しみだ」と宣言すると伊織が「でも大したものは無いじゃん」と水を差してきた。 私は以前のバザー…

ある男の生活

仕事が終わった。 一服した。 少し飲酒をした。 身体が鉛のように重かった。 精神がメキメキを音を立てていた。 それに構わず明日の仕事の準備をした。 外ではカラスが鳴いていた。 その鳴き声を聞くたびに学生時代を思い出した。 しかし思い出したところで…

電柱

横浜市営地下鉄ブルーライン北新横浜駅から西に約1km、港北インターチェンジのふもとには一辺50mほどの正方形の空き地があり、月に一回「安吾」というラーメン屋がそこに屋台を出す。 「安吾」ではラーメンを注文した客にタブレット端末が配布される。 客は…

ショッピングモール

郊外に大きなショッピングモールができた。 それはとてもとても大きなショッピングモールで東京ドーム2000個分の敷地面積があった。 最初このショッピングモールは繁盛していたものの、やがて宝石店を経営しているOという来店客からクレームが入った。 「と…

大前健斗は小学4年の時から兜を被っていた。 「なんで兜を被っているの?」 大前健斗の友人だった広瀬寛治はある日聞いてみた。 すると、大前は「だって頭が危ないじゃないか」と答えた。 広瀬が「誰に狙われているわけでもあるまいし」と言うとすかさず大前…

木星からの使者

夜、なんとなく寝付けなくて映画を観た。 「2001年宇宙の旅」である。 ラストの地球より大きい赤ん坊が出てくるシーンが印象に残った。 自分もあのくらいの大きさだったらもっと楽しい人生が送れていたかもしれないと思った。 水を一杯飲んでから眠りにつこ…

逆オデュッセイア現象

村で一番の美女が結婚した。 村の男たちは嫉妬に狂い、その夫を角材で打った。 ある者たちはヒノキの角材で打ち、ある者たちはスギの角材で打った。 さらにある者たちはブナの角材で打ち、その他の者たちはケヤキの角材で打った。 ヒノキの角材で打つ者たち…

The basement maybe ……

秋。空白の延長。眠りにつきながら。迷宮。どんづまりの壁の向こう。星々。果てしない。浮遊。野良猫を撫でる。撫でない。真っ暗。永遠に。石板。背中に張り付く。フィクション。そうフィクションとしての私。何の気配もない。ノートを開く。倦怠。零落。炎…

Lazy Queen

彼女は結婚してからというもの、すっかり動かなくなってしまった。 私は彼女を動かそうと色々と画策してみたがどれも無駄だった。 彼女は毎朝私に向かってこう言う。 「おはよう今日も私の人生はあなたのもので私のものではない」 その発言は私の交感神経を…

孔雀のいる公園

「あの辺には孔雀のいる公園があるんだよ」 「へえ、珍しいね」 「しかも4羽もいる」 「いっぺんに見たら目はチカチカしそうだね」 「君は孔雀を見たことあるかい?」 「全くないね、父親が極度の動物嫌いで子供のときから一度も動物園に連れて行ってもらっ…

ヌンチャク男

駅前でヌンチャク男がヌンチャクを振り回していた。 僕はそれをただただ見ていた。 ただひたすらに見ていた。 ヌンチャク男は人々の交通を妨害していた。 いやもちろんヌンチャク男自身には妨害するつもりはさらさら無さそうだったが、周りの通行人は怪訝そ…