黒色春日和

ダーティな思いつきをキューティにお届け☆

祝福

モクレン咲き乱れる頃、私はあなたを待っていた。

ずっと待っていたのだけれどあなたが一向に来ないので待ちくたびれてしまって私はJR横浜線鴨居駅までお迎えにあがったのです。あなたは驚いて私になにをしにきたのか聞いたけれど、それはあなたもよくわかっているはずです。私はキーホルダーを見せました。小さいクマのプーさんがぶらさがっているキーホルダー。あなたはそれで全てを理解しましたね。ゆっくりと土下座の姿勢になりバッグから取り出したポカリスエットを自ら頭にかけ始めましたね。それでいいのだ、と私は思いました。次にキャノーラ油を取り出して、両手に受け、それを顔全体に塗りたくりはじめましたね。これはいけません。ルールに従っていない。上りの電車が発車してそのあと一瞬静寂が訪れました。本当は私はこんなところまで来たくはなかったのです。あなたがとっとと私のもとに来るべきでした。どこかでカラスが合唱を始めました。私には妻がいる。もうすぐ小学校に上がろうとする娘がいる。あなたにちゃんとしていただかないと彼女たちは泣くことになるのです。私は小さくため息をついてあんぱんをあなたに与えましたね。あなたは急いでかじりついて、私に祝福を求めましたね。お年を召したご婦人が「なにしてらっしゃるの?」と尋ねました。私はご婦人に祝福を与えました。あなたはその場で土下座の姿勢のまま動かなくなった。私は疲れたので帰ることにしました。帰り際マクドナルドでチーズバーガーを4つ買いました。家では家族が待っています。私が笑顔で帰宅するのを待っています。