Dear A
三人目がきた。
二人目まではよかったけど三人になるときつい。
僕は滅入ってしまって、ここから出ていこうかと思ったけれど二人目が「待って、まだここにいて」と引きとめた。
「三人目は無理だよ」
「なんでよ、最初にそういう契約したじゃない」
「契約はしたけど、このまま二人でもやっていけるかどうか怪しいのに三人目は無理だろう」
「頑張ろうよ、ね?ね?」
「うーん」
僕は渋々三人目を受け入れた。
二人目は喜んで三人目と仲良くなろうと努力した。
でも三人目は全然しゃべらなかったし、なにしろ自分が置かれている状況に気づいてないらしかった。
「ほら、駄目だろう?」
僕が二人目に声をかけたそのとき三人目はついに口を開いた。
「ここはどこ」
二人目は嬉しそうに答えた。
「胎内」
「なんでこんなところに」
「新しい生命だから」
「私が?」
「そうあなたが」
「荷が重い」
三人目が出ていこうとしたので二人目と一緒に引きとめた。
僕はため息をついて二人目に宣言した。
「やっぱり僕が出ていくよ、それが順番だから」
「さみしい」
「仕方ないだろ、僕たちが契約したときとは状況が違うんだ」
「一緒に行くのは駄目?」
「三人目の面倒見てあげないと」
僕は出ていった。
外は広かった。五感が洗練されていくのを感じ、そのあまりに豊潤な刺激が僕の胎内での生活をほとんど忘れさせた。
どこかから泣き声が聞こえた。
僕も反射的に泣き出していた。