逆オデュッセイア現象
村で一番の美女が結婚した。
村の男たちは嫉妬に狂い、その夫を角材で打った。
ある者たちはヒノキの角材で打ち、ある者たちはスギの角材で打った。
さらにある者たちはブナの角材で打ち、その他の者たちはケヤキの角材で打った。
ヒノキの角材で打つ者たちはこう言った。
「我々はこの男を許すことができない。だから打つ」
スギの角材で打つ者たちはこう言った。
「我々はこの男を許すことはできるが、許すまでに時間がかかるのでそれまでは打つ」
ブナの角材で打つ者たちはこう言った。
「我々はこの男を許すとか許さないとかそういう話以前にそもそも男を見たら打つことにしている。だから打つ」
ケヤキの角材で打つ者たちはこう言った。
「ユリイカアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
長老はその様子を縁側から眺めながら従者に言った。
「まるで逆オデュッセイア現象だな」
従者はこう返した。
「まるで逆オデュッセイア現象ですねえ」
従者はこう返したものの古典の知識に疎かったので、長老のその造語の意味がいまいちピンとこなかった。