向こう側から戦車がやってきた。
その戦車は子供のころよく遊んでいた公園で見かけた戦車に似ていたので
とても懐かしい気分になって
すれ違いざま、そのフェンダーに触ろうとしたら
機関室からカラス頭の男が降りてきて
僕のそのフェンダーに触ろうとした左手をぶっとばした。
僕が「何するんだ左手を返せ」と言うと
カラス頭の男は「こいつは失敬」と言って
持っていたボストンバッグから新品の左手を取り出すと
僕に渡してくれた。
それが僕のあたらしい左手だった。
僕のあたらしい左手は指が多くて
使い心地がよくて
そして何より
かっこいいんだ。